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消費から消化へ『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』 感想

もう上映終了している地域のほうが多いですが…

というわけで、今回は 『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の感想です。

ただ感想というか見てない人にぜひ見てもらいたいのでレヴュー的な感じで書きます!

(それならもっと早く書けよ…)

 

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https://twitter.com/revuestarlight/status/1400588103551623171?s=20


今作品は2018年の夏アニメとして放送していた『少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト』の続編として作製されました。なので映画の感想の前にテレビアニメのあらすじを軽く説明します。

 

あらすじ

主人公の愛城華恋は99期生として聖翔音楽学園という舞台女優になるために演劇を専門する高校に通っていた。

そして華恋が2年生の春に運命の舞台に立つことを約束した幼馴染、神楽ひかりが転校してくる。華恋は再開に喜ぶもひかりは少し浮かない様子だった。

そんなひかりが夕刻に寮を抜け出すところを目撃する華恋。追いかけていくと学園の地下にたどり着く。

そこで華恋が見たのは舞台少女たちがトップスタァを目指し歌い、踊り、奪い合う謎のオーディションだった。

 

テレビアニメ版が主人公が2年生の時の話で、劇場版は3年生の時の話って感じですね。

テレビ版を見てもらいたいので今回は劇場版のあらすじは説明しませんが、どこが面白いのかを伝えられるよう頑張ってみます。

 

レヴュー スタァライトの魅力① 音楽・劇伴

この作品の大きな魅力の一つに音楽、劇伴がありますね。

作品の軸をなすOPやED、そしてあらすじで出てきたオーディション。フランクな説明をすると女の子たちがそれぞれ自分だけの武器(物理)を持って戦いながら歌うというものです。そしてこの5-6分あるオーディションシーンをまるまる楽曲にしているということからも音楽への力の入れ具合が分かりますね。

劇場版の楽曲感想の前にテレビ版の感想を書かせてください。

 

まず何といってもOP。

「星のダイアローグ」作詞:中村彼方 作曲:本田友紀

www.youtube.com

この曲の中村彼方さん(スタァライトの全楽曲を作詞している方)の歌詞を聞いて、「頑張ってる女の子が大好物な僕が絶対好きなアニメ!!」と確信し視聴し始めました。

女の子ががむしゃらに舞台少女を目指し、命を燃やすパッションがこれでもかというくらい歌詞に詰め込まれてます。女の子が頑張るアニメってどうしてこんなに魅力的に見えるんでしょう。

 

そして本田友紀さんの作曲センス。

ストリングスとピアノでシンフォニックなイントロから始まり、ドラムが入ってアップテンポになるAメロ、Bメロで一転3/4拍子で落ち着いてから、サビで一気に加速して気持ち良いコーラスも入っちゃう。これをOPでやっちゃうと毎話見るたび気持ちよくなれます。

 

そして一番好きなレヴュー曲

「恋の魔球」作詞:中村彼方 作曲:小高光太郎,UiNA

恋の魔球

恋の魔球

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open.spotify.com

 

 この曲は露崎まひるちゃんと愛城華恋ちゃんのオーディションで流れるレヴュー曲です。この曲はどうしても聞いてほしいので背景を軽く説明。

 

まひるちゃんは華恋ちゃんと相部屋で住んでいてお世話役みたいな感じでした。そしてまひるちゃんは自分にはもっていないキラめきが華恋ちゃんにはあると思い惹かれていたんです。しかし、約束の幼馴染ひかりちゃんが突然現れてしまう。私の華恋ちゃんを取らないで!

 

女の子に恋する嫉妬深い女の子、国を挙げて保護するべきですよね。そんなまひるちゃんの気持ちが伝わりまくる楽曲の感想です。

 

壮大で仰々しい交響曲のようなイントロから始まり半音ずつ上がっていくストリングスに心が高ぶります。そして0:50あたりで明るすぎるくらいの太陽みたいなトランペットが入り、えっちすぎるコンバスが登場。ここからまひるちゃんらしいおっとり日射しの陽気なブラス、気持ちの良いカッティングギター、リズムがスウィングし始めます。

 

視聴済みの方にはわかると思いますがここのスウィングは野球、リズム、演劇用語(もあるがこの場面には合わないのかな)の三つが含まれたトリプルミーニングであることを知ったときには「どこまで作りこまれてるんだ、この作品」と驚愕しました。

 

そして歌が入るのに2:05までかかります。Dream Theaterみたいですね。

歌詞はまひるちゃんの華恋ちゃんへの熱すぎる思いが野球に絡めて作られています。

ねえ 空振りしたとしても ゲームは終わらないから それが二人の運命

一番のサビが終わるとギターソロ&ピアノソロに突入します。

このソロがやばすぎます。初めて聞いた時は気持ち良すぎて椅子から転げ落ちて腰を抜かしながら泡を吹いてました。

オクターブから入る感じがウェス・モンゴメリーを彷彿とさせるギターソロと、テクニカルなピアノソロが極上です。

 

2番以降も語りたいところはありすぎるんですが長いのでここらへんにしておきます。

とにかく一回は最初から最後まで聞いてほしいです。

 

こんな感じでテレビアニメ版から音楽のクオリティは半端じゃなかったです。

他にもレヴューが始まる前の変身シーンで流れる劇伴「再生産」がLed Zeppelinの「Immigrant Song」などインダストリアルロックに影響を受けている話とか

再生産

再生産

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Immigrant Song (Remaster) - YouTubeyoutu.be

 

EDのえっちすぎる「Fly Me to the Star」がフランク・シナトラの「Fly Me To The Moon」(エヴァのエンディングにも使われたらしいですね)のオマージュだよねという話とか

Fly Me to the Star

Fly Me to the Star

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Fly Me To The Moon (Remastered) - YouTubeyoutu.be

 

大場ななちゃんとひかりちゃんのレヴュー曲「RE:CREATE」(作曲三好啓太さん!)が7/8拍子でシリアスな歌い出しするのが良すぎる話とかしたいんですがこれも置いておきましょう。

RE:CREATE

RE:CREATE

  • 神楽ひかり(CV:三森すずこ)、大場なな(CV:小泉萌香)
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

さて、本題の劇場版の楽曲ですがテレビアニメに全く引けを取りません。fhanaの佐藤純一さん、MONACA広川恵一さん(本当に大好きです)、「恋の魔球」を作曲した小高光太郎さんが代表を務めるLOVEANNEXの谷ナオキさん、矢野達也さんなど強力な作編曲者が加わり魅力的な楽曲を作り出しています。

そして劇場版はアニメ版に比べ曲の展開が多様になり、より多くのジャンルを内包したレヴュー曲が増えましたね。

 

サブスクとして公開されているので特に僕が好きだった「わがままハイウェイ」「MEDAL SUZDAL PANIC◎〇●」の2曲を紹介します。

 

石動双葉ちゃんと花柳香子ちゃんのレヴュー曲である「わがままハイウェイ」。映像の展開に合わせて歌謡曲→ジャズ→ファンクと曲調がくるくる変わるこの楽曲は、劇場一発目のレヴュー曲として、「劇場版のレヴューは一味違うぞ」とスタァライトの世界へ一気に引き込んでくれました。途中のファンクぽい展開でイントロのハイハットの刻みとドラムの勢いあるフィルインが気持ちよすぎて、声帯を抑えるので必死になると思います。

わがままハイウェイ

わがままハイウェイ

  • 石動双葉(CV:生田輝)、花柳香子(CV:伊藤彩沙)
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

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そしてまひるちゃんとひかりちゃんのレヴュー曲「MEDAL SUZDAL PANIC◎〇●」。

軽快なスネアドラムロールから始まるこの楽曲は明るいブラスに対して、徐々にまひるちゃんのダークでドロドロな恐怖を乗せ展開していきます。

途中でThe beatles「A day in the life 」の間奏やSonata arctica「…Of silence」が思い浮かぶサウンドエフェクトもあり一転、Pink floydを彷彿とさせる浮遊感のあるメロディに進行して、広川恵一さん作曲らしいえっちなエレピやサックスがしっかり入る!

とんでもないです、この曲。

「舞台少女心得 幕間」を意識してるであろう、ラストのパートはテレビアニメでは聞けなかったひかりちゃんとまひるちゃんのデュエットで最高でした。

 

スタァライト九九組の"MEDAL SUZDAL PANIC◎○●"をApple Musicで

MEDAL SUZDAL PANIC◎○●

MEDAL SUZDAL PANIC◎○●

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さらに劇場版楽曲の良いところはテレビアニメ版の劇伴が流れたり、テレビアニメ版のレヴュー曲のフレーズを継承した楽曲があったりするなど、オタクの好きな「二期のラストで一期のop流れる」みたいにオタクのハートをしっかり完全燃焼させてくるわけです。ネタバレになるので詳しくは踏み込めないので、まだまだ書けますがこの辺でアイカツします。

 

本当に言いたいのは今ならこの素晴らしい楽曲を劇場の音響施設で体に振動を感じながら浴びれるということ。こんなに凄いことはないです。

 

レヴュー スタァライトの魅力② 作画・演出・そしてオマージュ

 

僕はアニメオタクではないので作画について詳しく語れませんが素人目でもアニメ版より作画が凄いです。

僕一番驚いたのは東京タワーの上でまひるちゃんと華恋ちゃんが向き合うシーンで、副交感神経が刺激されて声が出そうになり、慌てて口を手で押さえたくらいです。

あと、やっぱりレヴューシーンは特に力が入っていて、躍動感の断片が予告編からも十分に伝わると思います。

youtu.be

 

そして「wi(l)d-screen baroque」という劇場版のテーマ通り、テレビアニメより派手で激しくて奇想天外な演出が多くありました。

 

wi(l)d-screen baroqueとはSF作品でテーマとなる「wide screen baroque」をもじったもの。時間や空間を飛び越えて規模がどんどん大きくなっていくスペースオペラって意味らしいですね。それが日本に輸入されて意味が変容されていき多様な演出の奔流がある作品という意味になったみたいですが、今回のレヴュースタァライトはまさにそれなんです。

 

ワイドスクリーンバロックの詳しい解説

the-yog-yog.hatenablog.com

 

アニメ版の頃から天元突破グレンラガン(最高にめちゃくちゃなアニメ)の穴掘りのオマージュがあったり東京タワーが最終話で大変なことになったりと多様な演出はありました。

しかし劇場版はアニメ版のは抑えていたんだなと分かるくらいにタカが外れていて、ADHD傾向にある僕のカバンの中と同じくらい入り乱れてめちゃくちゃな演出ばかりです。

 

オタクの大好きな映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のオマージュがあったり(この作品も車の上で火を噴くギターでライブしてたりめちゃくちゃでしたね)。

中村彼方さんの歌詞が書かれたデコトラが走り回ったり。

突然オリンピックが始まってしまったり。

画家のアルチンボルドの作品(だまし絵としてよく見ますね)をオマージュしたキリンが出てきたり。

劇場の観客を見つめるようなメタシーンが出てきたり(自分が女の子に見つめられることなんてほとんどないのでドキドキしました)。

 

でもこの作品が凄いのはこの一見無秩序に見える「めちゃくちゃさ」がありつつもアニメとしての形を保っているということだと思います。

 難しい演出だけでなく、所々思わず笑ってしまうような"フック"を用意してあるのが魅了されちゃうんですよね。

 

そしてオマージュの多さもこの作品を魅力的にする要素の一つだと思います。

この作品を創った古川監督のツイート

 

からもわかるようにあらゆる芸術作品へのリスペクトが詰まってるんですよね。

上記でいくつかのオマージュを挙げさせてもらいましたけどこんなのは序の口に過ぎなくて、音楽や映画、アニメはもちろん絵画やオペラ、美術史等々。

 

 

 

僕はこの記事を書くにあたってTwitterで他の人が気づいたオマージュをサーチしたりブログ記事、過去のインタビュー記事など読み漁りましたが掘れば掘るほど出てきて。。。

「僕が軽い気持ちで書いていい題材じゃなかったな」と何回か後悔しました…

 

こういった他作品の引用することで作品をより多層的に、多角的に描くことができますよね。

例えば上に挙げたアルチンボルドの作品をオマージュしたキリンが登場する点。アルチンボルドマニエリスム期の画家として有名です。そしてマニエリスム期は美術史では古代の文化を再生させ理想の美術を追求するルネサンス期と意図的に均衡を崩してダイナミズムを追求したバロック期の間に存在しています。

そのため野菜でできたキリンを燃やすことでロンドロンドロンド(アニメ版のダイジェスト的な劇場アニメ)という再生産からワイルドスクリーンバロック(今作品)が始まるんだなということが表現できています。

 

過去の文脈を引用することで展開を想起させる表現ができるのがオマージュの効果的な点ですよね。

 

この映画を見ることで、作品は製作者の過去の積み重ねから生まれてくるんだなと実感し、作品を楽しむうえでで過去の偉大な作品たちを学ぶのは大事だなと改めて思わされます。

 

レヴュー スタァライトの魅力③ ストーリー・テーマ

 

さてさて、①②では音楽であったり、表現であったりの魅力的な部分を伝えようとしてきたわけですが。

やっぱりアニメはストーリーでしょ派の僕から言わせてください。

この映画を見ると本当に元気が出るんですよね。

 

この映画は冒頭でも触れましたがアニメ版の一年後の話。アニメの劇場版あるあるの同じメンバーで新しい事件が起きたり、新規のメンバーが出てきて…なんてことはこの映画では起きません。

あくまでアニメの補完として。

主人公の役割によって深堀できなかった華恋ちゃんの内面を過去とともにしっかり表現し、彼女たちはどういう思いで今まで舞台を演じてきたのか、そしてこれから彼女たちはどういう思いで進路を決めていくのか。

そしてメタ的な視点も入り我々が見終わったアニメのキャラはどうなっていくのかというところまで踏み込んだテーマになっていると感じました。

 

人生は欠陥ランダムゲーですよね。

受験、大会、就職、仕事、結婚、選択ばっかりです。

ただそういった岐路に立ったとき、今での生き方を再確認させ背中を押してくれるような作品になっていると思います。

 

 

はい、こんな感じで書きたいことは書けました。

アニメ版を見たときは曲は最高だけど、なんだこれって感想を持ったりしてましたが、劇場版を見てめちゃくちゃハマっちゃいましたね。

アニメより、もう少しわかりやすいメタファーであったりテーマなのでそういうところもおすすめですね。

ちょっと前に庵野さんも「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきてる」

みたいな話をしてましたけども。

アリストテレスもメタファーは最高みたいなこと言っていました。

 

これを機会にメタファーや訳の分からない演出まみれのこの作品を、「トマトは何を指示してるんだ」とか「何で背が高くて声が低いバナナちゃんはこんなにも魅力的なんだろう」とか自分でじっくり考えたり、他人の考察を読みふけりながら召し上がってもらい、作品を「消費」ではなく「消化」をして自身の燃料にしてみてはいかがでしょうか?

 

↓今回の劇場版を見る前に見てほしいアニメ版

anime.dmkt-sp.jp

 

↓アニメ12話を見る時間がない人用の総集編(アニメ版を見た方も今作品の視聴前に見るべき)

anime.dmkt-sp.jp

 

↓上映館こちらです

cinema.revuestarlight.com

 

参考文献

blog.hatenablog.com

 

nlab.itmedia.co.jp

 

febri.jp

 

西洋美術史とは?年代順に詳しく解説 | thisismedia

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