初回
ローションまみれのマットは摩擦がほぼなくて、僕は滑りすぎて生まれたての小鹿みたいになっていた。なんとかうつぶせでマットに乗ると腰にとろんとした液体を感じる。
そして息づく間もなく嬢は僕の体に覆いかぶさり、ふくよかな胸でローションを僕の背中に塗り広げ始めたのだ!
まさか、こんなことが起きてしまうのかと、ソープのマットプレイが絶賛されていたのにも納得。塗り広げられていくローションの感覚を楽しむ。
そしてローションが全身にくまなく行き渡ると、ズゾゾという音と共に嬢が吸うように全身にキスを浴びせ始めた。最初音を聴いて、何が起きているのかわからず「何してるんですか!?」と動揺して聞いてしまった。
嬢の口は足、ふくらはぎ、太腿、臀部、腰、背中、僕の背面一周ツアーを始める。嬢がローションを吸っているのが健康に影響しないか心配になったが、思いとは裏腹に下半身のよろしくは一つのキスに対して敏感に反応しマットにぎうぎう押し付けられていた。
「今度は仰向けになってください~」
転ばないように慎重に体勢を動かす。仰向けになりよろしくをちらりと見ると僕の興奮が最高潮に達していることが、明確に分かった。精一杯主張するよろしくを嬢は口いっぱい(ということにしましょう)に頬張りめちゃくちゃにしていった。気持ち良すぎて思わず声が漏れる。そして果てそうになる直前、どうしても重点的にやってもらいたかったことを思い出す。
「けっこうMなので乳首弱いです(自己申告制)」
「わかりました~」
乳首の上を嬢の舌と人指しが艶めかしく動き、片方の手でよろしくを高速ストローク。
快感のメーターは振り切りよろしくから時速50kmの精子がほとばしった。
しかし僕はここから深い失望感を味わうことになる。
嬢は精を開放し痙攣しているよろしくを扱き続けたのだ。
少し回想を挟もう。
僕はこれでも一応マゾヒストの端くれなので以前から「男の潮吹き」というものに興味を持っていた。
しかし男性諸君は知っての通り射精後のペニスをしごき続けるのは大変な苦痛を伴う。
音声作品の力やシャワーの勢いを借りて挑戦したこともあったが幾度となく、もう限界です…という脳内の声に阻まれてきた。そのため、成功できないのは己の精神的弱さだ、強制的に行為が行われれば達成できると自分の肉体を信じていたのだ。
現実はとても残酷だ。モンハンで転倒したイャンクックのように、熱いアスファルト上に釣り上げられた魚のように、僕は上半身を暴れさせていたのだ。体が半分くらいマットから飛び出し危険な状態だったため嬢は手を止め中断してしまった。
「ごめんね、Mって聞いたから…」
と謝られてしまう始末。
「いえ、こちらこそすみません…」
何という屈辱。その瞬間自分の陰茎の弱さを強く恥じた。弱かったのは精神だけでなく精力や性欲というパラメーターでもあったのだ。
このことで少し落ち込むもプレイ時間はまだ40分ほど残っている。賢者モードが短い僕は体を洗い流している間にしっかり復活していた。
そして舞台はお風呂スペースからベットスペースへ移る。嬢は豊満な体に滴る水を拭くと、コスプレを再び着たほうが良いか尋ねてきた。もちろん着てくださいと光速ポン。というか正直服は脱がないでいたほうがいい派なのでそのままずっと着てもらうようにお願いした。
通常はここからベットでの性行為が行われるらしいが今回は性交渉を行わない。
代わりに少し軋むベットの上でコスプレ衣装越しに胸を揉ませてもらったり、大好きな!パンチラを堪能する。
よろしくがやる気満々になったところを「よろしくくん、ごめんね。今日も挿入はできないんだ。」と説き伏せ、保育園へ預ける。
今日の授業内容はお手々遊び、お歌の練習(親)、吐精、お着替えらしい。
保護者会でキスとかはないんですかと聞いたら
「フェラしたあとは嫌がるお客さんも多いから…」
「僕はたまに精飲とかしているので全然気にしないですよ!」
「やばいね!彼氏のでもほとんど飲まないよ〜」
とキスを起点に手淫が始まる。
2回目なので少し感度は鈍っていたが嬢のテクニックは素晴らしく僕は呆気なく精を放出した。
プレイ終了10分前。シャワーを再び浴びて貰った三ツ矢サイダー飲みながら、めっちゃお腹空いたね〜とか君は眼鏡外したほうがいいよ〜なんて他愛もない話をした。一日にどのくらいのお客さんが来るんですかと聞いたら、多いときは2桁行くときもあるらしく改めてすごい仕事だと感心したりした。
服を着替えてお見送りの時間、嬢に深くお辞儀をして退店する。
日は落ちていて街灯のぼんやりとした明かりが建物を包んでいた。読者の方々は僕が快感の余韻に浸っていると思っただろうか。全てを開放した身体には真っ黒な精神が宿っていた。
陰キャ過ぎて会話をすると興奮できなくなってしまうこと(こんなのオナホとしか性交できないじゃん)、思ったより僕の陰茎は弱いこと。2つの事実が心に闇を渦巻かせていたのだ。
原因はわかっていた。日常から目を背けていたから。既に舞台の上に立っていることを自覚せず、自身の弱さに気づかないふりをして怠惰な生活を送っていた。もっと性欲を研ぎ澄まし、普通の会話を楽しむという「キラめき」を強く求めなければと決意し、僕の双眸は次の舞台を見据えた。